2016/07/13
「コンピュータが子供をプログラムするのではなく、子供がコンピュータをプログラムする」教育
東京都渋谷区にある小学生対象のプログラミング教室スモールトレインで講師をしております福井です。写真は私たちのプログラミング教室で使っているラズベリーパイです。今はケースがしっかりついていますが、買った時は何もつけていませんでした。さすがにケースが無いと壊れそうです。
さて、このコラムも今回で16回目です。今回のテーマは「コンピュータが子供をプログラムするのではなく、子供がコンピュータをプログラムする」教育です。これは第9回でも紹介したシーモア・パパートの言葉で、1980年に書かれた本に載っています。1980年からこのような考えをもとに教育が行われていたのはすごいと感動しました。
コンピュータと教育
シーモア・パパートは発達心理学者で数学者です。筆者は幼少期に歯車にほれ込み、それで遊んでいたことによって数学ができるようになったと述べています。つまり、それが考え方の基礎をなしているということです。そしてコンピュータについて以下のように述べています。
コンピューターをより適応性のある道具にして、私にとっての歯車にあたるようなものを、多くの子供達が自分で創り出せるようにしようというこの10年来の私の試みの成果が本書である。(6頁)
私自身も約15年の塾講師生活を通して、考える方を教える必要性に気づきました。しかし、いざ考え方を教えるとなると、何をどのように教えればいいのかという問題が出てきます。そこでプログラミングなのですが、プログラミングの良さが以下のように書かれてます。
「できた」か「できなかった」かという考え方をモデルにしているために学習の遅れている子供が多いが、コンピューターのプログラムを学ぶうえでは一度でできるということは殆どない。プログラムの達人になるということは、「バグ」即ちプログラムがうまく働くことを妨げている部分を取り出し、訂正することに巧みになるということである。プログラムについて問題にすべきことは、正しいか間違っているかでなくて、修正が可能かどうかという点にある(31頁)。
つまりプログラミングの良さはデバッグだということです。デバッグの考え方は何もプログラミングをした人にしか身につかないものではありません。現に多くの人が身につけています。私もプログラミングの考え方を違和感なく受け入れることができました。そうしたことを前提にした上で、プログラミングの方がよりそうした考え方を身につける事ができると筆者は言います。
プログラムを作り出すことから類推して学習を考えるというのは、自分のデバグの技術を整然と表現し、それを意識して改良できるようになるのに有効で近づきやすい導入方法である(32頁)。
確かにプログラミング、特にスクラッチは考え方が可視化され、修正個所を自分で探し、修正しやすいというメリットがあります。なぜ、こうした答えになったの、なぜこのような動きになったのか、コードを見て修正していく作業は学習塾ではなかなか見られない光景です。とにかく手が動きます。それは新鮮な経験でした。
プログラミングを算数に導入して教育を行うこと。これはシーモア・パパートがすでに実践しています。私も算数をプログラミングすることで考え方を学べるだけでなく、算数も楽しくなるのではないかと考えています。
我々の教育文化は数学の生徒が今学んでいることは何であるかを納得するための方策を殆ど何も与えていない。その結果、子供達は数学を学ぶのに最悪のモデルに従うことになる。これは暗記というモデルで、内容を無意味なものとして扱う分裂的なモデルである。…だが、コンピューターなら、家庭、学校、職場などの日常生活の真只中に現れた数学を話す生き物ならば、そのような絆をもたらすこともできるにちがいない。教育の挑戦は、それを利用する方法をみつけることである。(59頁)
私達のカリキュラムで「5を10回足す」(問題では5個の荷物を10回荷台に乗せるです)というというのがあります。5を10回繰り返して足していけば、かけ算を使う必要がありません。しかし5×10でも正解です。ここで5を10回足すことは5×10と同じだと改めで気づきます。引き算と割り算も同様です。50から6を引けなくなるまで引くと2が出てくるのですが、「これは何?」と聞くと答えられません。つまり割り算は何かという理解ができておらず、暗記算数になっているということです。
図形もプログラミングで書いていくと、どの角度でどちらに曲げればよいかと考えることになります。間違えれば修正することも簡単です。そうして目指すべきを図形を描いていきます。
プログラミングを用いることで割り算やかけ算を理解していく。またデータを元に規則性を理解する、組み合わせを考えるなどさまざま利用できます。そうしたカリキュラムを作りました。まだまだ増やすこともできそうです。プログラミングを通して考え方を学ぶだけではなく、算数や国語も好きになる。それが最終的な目標です。
現在、プログラミング教室スモールトレインでは、説明会&体験会を実施中です。ご興味のある方はぜひご参加ください。次回は7月23日(土)です。
参考文献:パパート, シーモア(1982)『マインドストーム』(奥村喜世子訳) 未來社