2016/08/09

やさしく教育論⑥~ルールを破っているのは誰ですか?

教室

東京都渋谷区にある小学生対象のプログラミング教室スモールトレインで講師をしております福井です。第24回目はやさしく教育論⑥として「過去の歴史は現在とつながっている」です。こちらもやさしくデジタル2016年7月号に掲載されたものが元になっています。

私が初めて塾で講師を始めたのは25歳の時でした。大学院の修士課程を修了し、インドの大学への奨学金(インド政府奨学金)もとれ、あとはインドに留学するだけだったのですが、なかなかビザがおりませんでした。ビザが下りたらすぐにインドに行くことになっていたので、まともにバイトもできず短期バイトで生活する日々を送っていたのです。今思えばよく生きていられたなと思います。


そんな生活が続いて、相変わらずビザが下りない日々。1年ぐらい待ったのですが、それでもダメでした…。単なるインド政府の事情なのか、私の素行が悪いのか(カシミールに滞在していた危険人物)、事情はよく分かりませんが、このまま待っていても仕方がないので、日本の大学院で勉強することを決意し、インド政府奨学金は辞退しました。

「もしあの時インドに行っていたら…」と考えると、今とは全く生活も違っていたでしょうし、今でも研究続けているかもしれないなと思うと同時に、きっと結婚せずに極貧生活を送っていただろうなとも思います。

それで、日本の大学院博士課程に進学することにしたのですが、いきなり進学せずに研究生になりました。そしてバイトです。お金がなければ研究はおろか、生活すらできません。逆に言えば、お金さえあれば、大学で職を得なくても研究はできます。そんな思いで、塾講師になることを決意。早速、某塾で時間講師として働き始めました。

塾の先生の仕事はただ教えるだけではありません。生徒の成績管理から保護者対応、そして教室運営など多岐にわたります。また、小学生や中学生はただ淡々と授業をしても聞いてくれません。時にはずっと私語をしています。あまりに私語が多いクラスはクレームが来て、校長に怒られることもあります。

そのため、まずは静かに授業を聞かせる、その上で成績を伸ばすというやることが多すぎるし、新人の先生にはかなり酷な現実がそこにあります。そういう意味で、3年離職率が上位に来るのは頷けます。

さて、そんな状況で新人の私が授業をやるわけですから、うまくいくわけでありません。もちろん問題は解けます。しかし、静かに聞かせる、分かりやすく教える技術はまだまだでした。さらに悪いことに、どうやらとても騒がしいクラスの担任に私が指名されていたらしく、大変苦労しました。本当に言うことを聞きません。

言うことを聞かないから怒ります。そうすると怒ってばかりの授業になり、授業が成立しません。そこで職員が集まり、緊急会議が開かれました。テーマはずばり「静かな授業運営について」です。今、考えれば大変情けない話ですが、こうしたテーマで話合いが行われるくらい、大変な状況ではありました。

どのように静かにさせたらよいのだろう。私は怒ること以外の選択肢を持ち合わせていませんでした。そこで言われた言葉は衝撃的でした。それは「怒ってはダメ」です。一瞬私は意味が分かりませんでした。うるさいのだから怒らないとダメだろう。もっと怖くしないと。

しかし、その方が言った意味はそもそも違うのです。怒らないと成立しない授業をしてはダメだという意味だったのです。ああ、なるほどと思いました。うるさくなったら怒るわけですが、そもそもなぜうるさくなったのかを考えると、それはうるさくなる原因があるからで、その原因を無くさないといけないよという意味だったのです。そしてその原因はあなただとも言われました。

私たちは授業をする際にルールを作ります。例えば私語をしない。発言をするときは手を挙げるなどです。そうしたルールを最初に破るのは実は先生です。手を挙げていないのに発言する生徒に答えるのは先生です。先生が答えてしまうと、「今、発言していいんだ」とみんなが発言しはじめます。結果として教室は大騒ぎ。そして先生が怒るというパターンです。

私は無意識のうちにルールを破る生徒が悪いと思っていましたが、実際にはルールを破っているのは自分であり、悪いのは自分だと考えるようになりました。そうすることで授業の運営の仕方を考え直すことができました。どこで発言を求めるか、どこで楽しく騒ぐかなど、それも先生がうまくコントロールする。だんだんとそうしたことができるようになり、うまく授業を運ぶようになりました。

こうしたことは塾だけの話ではありません。一般の会社でも同じではないでしょうか。本当は自分が最初にルールを破っているのに、相手の責任にしていませんか。私は今、塾業界を離れていますが、今でもこの教えを実践して、相手ではなく自分がルールを破っているのではないかと常に考えるようにしています。そうすることで自分自身が成長できるのではないかと思っているからです。

何か問題が起こった時に人のせいにするのは簡単です。常に自分の問題として考える。そんな態度でこれからも仕事をしていきたい。そう考えてプログラミング教室も運営しています。

現在、プログラミング教室スモールトレインでは、説明会&体験会を実施中です。8月の説明会&体験会は8月17日(水)~19日(金)です。

*このコラムは、コンピュータリブ社の発行する「やさしくデジタル7月号」に掲載されている内容を許可をいただいて加筆して転載しております。

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