2019/10/07

2020年スタート!小学校のプログラミング教育の行方

プログラミング教育が小学校で2020年からスタートします。学校関係者に聞いても、それがいったいどのようなものになるのかイメージがつかめていない場合も多いです。そこでこの記事ではプログラミング教育が始まった背景と実際に行われている事例を紹介します。

なぜ文部科学省はプログラミング教育を小学校で行おうとしているのか

そもそもなぜ文部科学省はプログラミング教育を小学校で行おうと考えたのでしょうか。文部科学省の手引きによれば以下のように記載されています。

有識者会議「議論の取りまとめ」においては、情報技術を効果的に活用しながら、論理的・創造的に思考し課題を発見・解決していくために、「プログラミング的思考」が必要であり、そうした「プログラミング的思考」は、将来どのような進路を選択しどのような職業に就くとしても、普遍的に求められる力であるとしています。そして、「プログラミング的思考」とは、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要
であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」であると説明されています(参考2(p.52)を参照)。

小学校プログラミング教育の手引き(第二版)

つまり今後、コンピュータに発達に伴い、全ての人がコンピュータに関する基本的なことは理解しておくべきだとか考えているということです。確かに将来的にはAIがますます進化しており、AIによって社会が大きく変わると言われています。

2020年から学習指導要領も改定されます。それに合わせた形でのプログラミング教育の実施ですので、三つの柱(「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」)に対して以下のように定義しています。

【知識及び技能】身近な生活でコンピュータが活用されていることや、問題の解決には必要な手順があることに気付くこと。
【思考力、判断力、表現力等】発達の段階に即して、「プログラミング的思考」を育成すること。
【学びに向かう力、人間性等】発達の段階に即して、コンピュータの働きを、よりよい人生や社会づくりに生かそうとする態度を涵養すること。

小学校プログラミング教育の手引き(第二版)

ただしこれでは具体的にどのようなことを行うのか見えてきません。実際の内容としては学習指導要領の中身を確認する必要があります。それについては次章で説明します。

小学校で行われるプログラミング教育とはどのようなものか

小学校で行われるプログラミング教育は必修になりますが、プログラミングという科目ができるわけではありません。プログラミングは各教科の中で行われるとされています。具体的にはどのような記述が学習指導要領の中でされているのでしょうか。

例えば5年生の算数では正多角形の意味をもとに正多角形を書くという場面があります。こちらの場合、プログラミングと紙の上での勉強の両方を行います。

はじめに、正六角形などを定規と分度器を用いて作図することを試みさせ、手書きではわずかな長さや角度のずれが生じて、正確に作図することは難しいことを実感させます。
次いで、プログラミングによる正方形の作図の仕方を学級全体で考え、個別又は少人数で実際にプログラミングをして正方形が正確に作図できることを確認した上で、プログラミングによる正三角形や正六角形などの作図に取り組みます。
児童は、手書きで正方形を作図する際の「長さ□ cm の線を引く」、「(線の端から)角度が 90 度の向きを見付ける」といった動きに、どの命令が対応し、それらをどのような順序で組み合わせればよいのかを考え(プログラミング的思考)、また、繰り返しの命令を用いるとプログラムが簡潔に書けることに気付いていきます。
そして、「正三角形をかこうとして 60 度(正六角形をかこうとして 120 度)曲がると命令すると正しくかくことができないのはなぜか」、「なぜ正三角形のときは 120 度で、正六角形のときは 60 度でかけるのか」といった疑問をもち、他の児童と話し合い試行錯誤することによって、図形の構成要素に着目して、正多角形の角の大きさと曲がる角度との関係を見いだしていきます。
また、正三角形や正六角形だけでなく、正八角形や正十二角形など、辺の数が多い正多角形も繰り返しの回数や長さ、角度を通して考えてかいていきます。
さらに、「辺の長さが全て等しく、角の大きさが全て等しい」という正多角形の意味を用いて考察することにより、今までかいたこともない正多角形をかくことができることとともに、人が手作業でするのは難しかったり手間がかかりすぎたりすることでも、コンピュータであれば容易にできることもあるのだということに気付くことができます。

小学校プログラミング教育の手引き(第二版)

どうでしたでしょうか。なんとなくイメージがつかめましたでしょうか。これもプログラミングをやったことがないと分からないかもしれません。プログラミングでやればなぜ簡単なのかはやってみないと分からないからです。

こうしたプログラミング教育は2020年からスタートですが、先行して行っている学校もあります。次の章では実際に子どもたちに対してプログラミングを実施している事例を紹介します。

プログラミング教育の事例は?

先ほどの正多角形の事例はすでに小学校で実践しているところがありました。

このとき,物さしと分度器でかくときは,正多角形の内角を用いてかいていたが,Scratchでは,外角を用いることが味噌である。外角という概念は,中学校の数学で学習するので第5学年の子供たちにとっては未習の内容である。本時においては,用いる角度が違うことに気付き,どういう角度をプログラムに書いたら,正多角形をかくことができるのかを考えることが重要である。
つまり本時においては,教師が「このようにプログラムを書けば正多角形がかけます」と教えて,子供がそのプログラムを真似することで正多角形をかけるようにすることをねらっているのではない。つまり「プログラムを使って正多角形がかける」ことがねらいなのではなく,「どのようなプログラムを書いたら正多角形がかけるかを考える」ことがねらいなのである。

正多角形をプログラムを使ってかこう(杉並区立西田小学校)

さきほどの学習指導要領と同じ内容ですが、ここまで簡略化されています。実際に多くの子どもたちを相手に多くの成果を得ようとしても、ほとんど何も得られないで終わってしまうのが一般的です。西田小学校のようにどの角度を入れたら正多角形が描けるのかに絞って行った方が良いです。

まずはプログラミングを使ってその角度を求めた上で、なぜその角度で図形が描けたのか考えさせた方が良いでしょう。スモールトレインで行う場合も、角度に関しては同じようなやり方で行っています。

プログラミング教室スモールトレインで行っているプログラミング教育

私たちの教室では先ほどの正多角形はもちろんのこと算数をメインにした教育を行っています。レベルは初級・中級・上級とあり、以下のような問題が含まれています。

スモールトレインのカリキュラム

初級

1~10までの数字を足してみましょう。

※プログラムで四則演算ができることが目標です。

中級

1000 円札を両替したときに出てくる硬貨の組み合わせは何通りあるか求めよ。なお、硬貨の順番は区別しないものとする。また硬貨は最大15 枚とする。

上級

100 以下の素数をすべて書き出せ。

もちろん算数だけでなく、ゲームもプログラムしています。プログラミングそのものができるようになるというよりも、プログラミングを通して、自分で考えるという習慣を養ってほしいと思っています。そのために先生は、なるべく子どもたちのやりたいことを見守る形での指導をしています。

まとめ

2020年はもう来年ですので、プログラミング教育のスタートをしなければいけませんが、学校によって差があるのも確かです。また設備がどこまで整っているのかも学校によって差があるのは確かです。今後、どのようにプログラミング教育が実施され、どのような課題があるのかを含めて、見ていきたいと思っています。

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